Web制作会社 bild(ビルド)

映画ランナー

脚本家・ライター。ささやかな知識をあなたに。ご連絡は→eigarunner@gmail.comまで。 映画ランナー (@eigarunner)

企画 2018年06月15日

映画に施されたサイン

シネマラマ

page:2 - デンジャラス・カラー:『シックス・センス』『ゴッドファーザー』

デンジャラス・カラー:『シックス・センス』『ゴッドファーザー』

次に例に出すのも色ですが、今回は意味がよりハッキリと直接的なものになっています。

 

ずばり、“死”です。

 

 画面の中でとある色が目立つように映されたら、そこに死の空気が漂っていることを示すサインです。今回のサインの役割は予兆とでも云えます。

 

代表的なものとして大ヒットしたサスペンス・ホラー映画『シックス・センス』(1999・米)です。

 

 この映画が有名なのはやはりに有名なラストの仕掛けですが、もはやあまりにもネタにされ過ぎてそのことを知らずに初見で観る事は難しいでしょうね。逆にこの映画ではそれ以外のことで語られることがないので、今回はラストの実は医師も死者であったという結末を示唆していたサインについて書きます。

 

先に答えを書くと、この映画のサインは赤色です。

 この映画ではどこかしこに赤い色がこれでもかというぐらいに配置されています。教会のドア、街並みの壁の色、地下室のドアノブ、風船、コールの学生服と、実はこの映画のイメージカラーは赤です。この映画の赤は“死”が現実の世界に凄く近い所にある、むしろ溶けあっているぐらいにすぐ傍にある事を示しています。

 

私が『シックス・センス』で最も怖いシーン

 その演出として顕著なのはお葬式のシーン。母親から毒殺されたキラのお別れ会の際に、彼女の母親が着ている服の色も眩いばかりの赤色です。他はみんな喪に服する際に適した色の服を着ているのに、娘に死をもたらした彼女だけが、この映画内で死を象徴する赤い色を着て、しかも、赤いチューリップの花をいじっている事から、まるで我が子を毒殺したことを全く意にも介していないように見え、更に危険な感じを漂わせています。

 

デンジャラス・オレンジ

さて、死を予兆する色として赤ではなく黄色がその役割を果たした例があります。それは『ゴッドファーザー』(1972・米)で描かれています。

 

この映画では画面に蜜柑が映ったら、誰かが死んだり、銃撃されます。

 

 たとえば、ドン・コルレオーネが街に襲撃されるシーンでは直後に蜜柑を購入していますし、ハリウッドのプロデューサー、ジャック・ウォルツの家のテーブルの上にはオレンジが確認でき、その後彼の競走馬が脅迫のために殺害されてしまいます。

 

 しかし、『ゴッドファーザー』におけるオレンジが死の予兆のように映っているのはただの偶然です。それは、美術監督のディーン・タヴォウラリスが

「この映画の色調が全体的に暗いので、その対称的な色を成すものとしてオレンジを用いた」

と述べています。ただ、彼はそのオレンジが危険を表すシンボルとして用いられているのではないか?という解釈は気に入っているようです。

 

 この偶然にもう一つちょっとした偶然が重なります。それはオレンジが映ってもその直後に人が死なないシーンがあるのですが、それは五大ファミリーが会合する場面です。その時に映るオレンジはシーンが切り替わる直前にドン・コルレーネの手によってカメラから見えなくなります。その手を挙げた理由は敵対するマフィア達に平和協定を受け入れたことを示す仕草です。つまり、和平を受け入れた手がオレンジを隠すことによって、まるで登場人物たちが死の空気から逃れたように見えるのです(まぁしばらくの間ですが)。

 

 

 これは偶然の上に、偶然を重ねただけの解釈ですが、映像表現としたらかなり粋な演出だと思います。“死”などの具体的な形を伴っていない者をシンボライズして、それを画面のようにどのように映すかによって運命を仄めかす手法はこの伝説の映画の偶然から学んでもよろしいのではないかと思います。

新着記事