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服に隠された意味 / 『十二人の怒れる男』/ 『インサイド・ヘッド』
シネマラマ
page:4 - 色に隠された結末服の色とコーディネート
私はファッションには全く明るくないので服の組み合わせについては説明したり、賛辞したりするのはとてもじゃないができません。しかし、オシャレの観点とは違った角度から服のコーディネートは人の心の中を外に照らすこともあります。
ライリーはサンフランシスコに引っ越した時、非常にカラフルな服を着ています。その服は感情のすべて色が含まれているお洋服です。
しかし、学校に行く時にはその服の上に黄色のパーカーを着ています。
ライリーは生まれ育ったミネソタを父の仕事の都合のために引っ越しました。新しい土地での出会いや生活を楽しみにしていたのでしょうが、住み慣れた街を離れることへのカナシミを彼女は親にも、自分一人だけの時も表に出しませんでした。常にヨロコビが彼女の主要な感情を握っていました。強い言い方をすると、支配していました。ライリーは両親を心配させないためにヨロコビいっぱいのふりをして無理をしていたのです。
それを黄色いパーカーが他の感情の色を隠すように着ていることによって表現しています。
ヨロコビが他の感情を他人に見えないようにライリーを覆ってしまっていることを。
服の色と、パーカーとシャツを組み合わせた非常に上手い映像表現です。
ちなみに、Tシャツにはオレンジの色も含まれていますが、後に登場するライリーのイマジナリーフレンド(空想上の友達):ビンボンが身に付けている胸のバッチの色と一緒です。
色に隠された結末
もう一つ、実はとあるキャラクターを象徴している色がこの映画の結末を示唆していたのではないか、考えられる点があります。ここからはちょっと服の色とは離れますがお許しを。
それはヨロコビの目の色とオーラです。
各感情を表すキャラクターたちはそれぞれの色と、瞳の色は一緒です。
ただ、ヨロコビの瞳の色は黄色ではなく、青色です。そして、ヨロコビだけが他の感情とは異なる点はオーラを纏っていることです。しかもそれは青色です。
この映画内でヨロコビは管理室から離れて長期記憶保存エリアや、忘却の谷底などを冒険する際中に様々な事を経験し、涙を流します。
つまり、ヨロコビがカナシミを経験するのです。ヨロコビとカナシミが入り混じった感情がある、ということをライリーよりも先に、ヨロコビがカナシミという感情を体験するのです。そして実はそれはヨロコビというキャラクターが黄色で象徴されているのに、青い色の瞳とオーラを持ち合わせていたことによって、彼女には悲しい気持ちを受け入れられることが既に示唆していたのだと考えられます。
■最後のひと言
最後は服からは離れてしまいましたが、要は色によってキャラクターの感情を表現することもあるということをここでは紹介させて頂きました。
代表的な色の使い方はやはりなんと言っても白黒による善悪の使い分けでしょう。そしてそれは白黒映画との相性がとても良かった。
しかし、今世の中の映画の99%はカラーなのに、それらの色を効果的に用いて表現しようとするケースは少ない気がします。
映像内の色彩は見かけやバランスによる美しさしか役割を担えないのか?もちろん、そんなことはなく、色は感情を表現することだってできるし、もしかしたらもっと違うことを喋りたがっているのではとも思うのです。口ではなく、色で。そのことに耳と目を傾けた時、表現と色はもっと溶け合って新しいものを創造してくれるはずだと、私は考えています。